健診でγGTPのみ上昇している場合
☆健診でγGTPのみ上昇している場合
・腎、膵、肝、脾に分布している。
・飲酒、胆石、アルコール、サプリ、ランニングなどでも上昇する。
・1ヶ月断酒して再検する。
・AST,ALT,γGTP,ALP,HBs抗原,HCV抗体,ANA(AIH),AMA(PBC),腹部エコーして脂肪肝や肝SOLがないか精査する。異常なければ年2回フォローする。
・軽度肝機能異常はウルソ200mg3錠分3で改善することがある。
・胆汁うっ滞でγ-GTP、ALP、LAPが上昇するがγ-GTPはそれ以外でも上昇する。
・γ-GTPのみ上昇し、ALP,LAPが正常なら飲酒、抗痙攣薬、非アルコール性脂肪肝である。
・γ-GTPはアルコール摂取に敏感に反応して上昇、禁酒後2週間で半分以下になる。
腹部全体痛
<腹部全体痛>
・ブスコパン無効な痛み、体位変換できない痛みは腸管壊死/解離の可能性あり造影CTが必要。
①頻回嘔吐+手術歴
腸閉塞⇒手術歴がない場合は鼠径部を必ず見ること。
cf)腸閉塞
・便秘による腸閉塞は滅多にない(浣腸は禁忌)。結腸の腸閉塞は大腸がんのサイン。
・麻痺性イレウスと腸炎の区別は難しい。
・エコーで拡張腸管の蠕動がないこと、腹水があること、gaslessな拡張があることなどが絞扼性を疑う。
・閉塞性、癒着性、絞扼性にしろ閉塞起点があるはず(閉塞性は腫瘍や腸重積、癒着性は索状物によるbeak
sign、絞扼性は腸捻転など)。なければ麻痺性(SMA塞栓症、虫垂炎、PID、穿孔)となるが、全体的に腸壁の肥厚が見られれば腸炎(腸炎による麻痺性イレウスとも考えられる)
・絞扼性が否定的なら、イレウス管を十二指腸内に留置し、パントール20-100mgを点内に入れて持続投与すれば蠕動でイレウス管が進むので小腸内の減圧はできる。時折イレウス管の位置を腹単で確認する。大腸癌による閉塞の場合は、CFでステントを留置し、排便させて食事摂取を早めに行わせること。早期からのリハビリも重要。
・癒着性イレウスに対し、NGチューブから胃内容物を吸引した後に、ガストログラフィンを50-100ml注入し、6-24時間後に撮影し、右横行結腸に造影剤が認められれば、感度92%、特異度93%で手術治療なしで治療可能と判断できる。
cf)腸重積の原因:大人は腫瘍、子供はMeckel憩室、Peutz-Jeghersなど。腸重積は乳幼児だけの疾患ではない!!
②板状硬
消化管穿孔かも⇒造影CTして、free
airや腹水貯留ないか見ること。上部消化管穿孔でのNG留置は愛護的に行い、airも少量で確認すること。あまり勢いよく長い距離挿入したり、airを多く入れ過ぎると穿孔を増悪させるので注意。下部消化管穿孔は腫瘍、憩室の他に老人では誘因なく起こる(便秘でいきんだ後に憩室が穿孔起こすことあり)。
cf)腸管穿孔を見逃さないためにairを強調するWL(WC)80、WW1200くらいに変更して見るとよい。初期は腸管壁に沿ってfree
airが見られることが多い(WL:window level,WC:window center,WW:window width)。
③腹部軟+喫煙/高血圧
腹部大動脈瘤破裂かも⇒腹部エコー、造影CT
cf)腹部大動脈瘤の切迫破裂や破裂は腹部の筋性防御はみられない。筋性防御はまず腸管穿孔を考えること。
cf)腹部大動脈瘤破裂について
・腰痛を初発とする腹部大動脈瘤破裂は比較的慢性的な経過を取り見逃しやすい。
・体動によらない腰背部痛、血圧低下、嘔吐は腹部大動脈瘤破裂or切迫破裂の徴候。
・closed rapture(破裂による出血が後腹膜腔にとどまった状態)ではタンポナーデ効果によって一時的に出血が抑えられ、血圧が回復することがある。ショック+嘔吐で来院し血圧回復の場合、迷走神経反射と勘違いしAAAを見逃しやすい!
cf)腹部大動脈瘤
・大動脈瘤は腹部大動脈3cm以上もしくは正常の1.5倍以上
・胸骨下端から臍までが腹部大動脈、胸骨下端と臍の間に腎動脈
・触診するときは腎動脈より上か下かが重要、5cm超えても4人に1人は触知しない、3-4cmで30%程度が触知
・有病率5%
・破裂すると半分がその場で死亡、病院に到着しても半分が死亡
・危険因子は喫煙、高血圧、家族歴
・破裂リスク:
①紡錘状よりも嚢状の方が破裂リスク大
②3-4cmでは年間2cm、4-5cmでは年間3cm、5cm以上は年間5cm以上進行する
③破裂のリスクは、4cm:1.5%/年、5cm:6.5%/年、6cm:10%/年
・経過観察の目安
4cm以下なら年1回、4-5cmなら年2回、5cm以上なら専門医コンサルト(無症状でも)
④腹部軟+Af/透析
SMA塞栓症かも⇒造影CT。Af患者の腹痛は絶対に疑うこと。
骨折
<骨折>
★基本的に緊急性は低いのでシップとギプス包帯で固定し、翌日の整形外科受診を指示する(顔面なら口腔外科受診)。
☆開放骨折、血流障害、神経障害あれば即日整形受診すること。また、小児も顆上骨折や足関節の骨折は皮膚障害を起こすこともあり、即日整形受診を。
☆次のことを説明する。
・レントゲンで見えない骨折もあるが今は時間外で人手が足りず詳しい検査ができにくいこと
・荷重がかかってずれてきて初めてわかる骨折もあること
・小児は骨化が進んでいないため骨折が見えないことがある
☆レントゲンで自発痛、圧痛、叩打痛があるところを入念に見る(前後上下も)
☆肋骨骨折を探すときは必ず胸部正面も撮影し、血胸がないか見ること。
☆上腕の外旋時痛は上腕骨頚部骨折の可能性あり。
☆下顎骨は脱臼あればすぐに整復する。顎関節の左右差ないか見て、脱臼無く2横指開口できれば後日口腔外科受診を指示。
☆小児の肘の骨折は4方向+両側、関節周囲の脂肪組織の盛り上がり(fat pad sign)あれば骨折
☆外顆骨折は転位強ければ整形call。上腕骨遠位端の骨化は外(1才)→最内(5才)→内(10才)。
☆壁を殴って中手骨骨折→転位を直してからMPを曲げてPIP/DIPをまっすぐにして固定する。
☆開放骨折、神経障害、血流障害あればすぐに整形callを。
☆CTの骨条件なら骨が重なり合うところの骨折が良く分かる(膝関節、足関節、手関節、頚椎、骨盤、頭蓋骨、頬骨、下顎骨など)。
☆顔面の骨折は髄液漏や神経所見なしなら後日口腔外科受診を指示。
☆転位のない骨折はソフトシーネやオルソグラスで固定し、後日整形外科受診を指示。
☆脱臼(転位)、感覚運動障害、血流障害(5P症状)あればすぐに整形外科call。
☆5P症状のない開放骨折はとりあえず創閉鎖し、後日整形外科受診を指示。
☆拘縮、麻痺がある場合の骨折対応(療養病院での骨折対応)
・末梢の動脈の拍動を確認。
・受傷原因の精査(多くは体転時に無理な姿勢になり自重が加わり、関節拘縮があり外力の逃げ場がないためと思われる)。
・麻痺、拘縮があれば手術適応はなし。
・患肢を正常位に戻して、湿布を貼り弾性包帯を巻いておく。あまり強く巻きすぎないこと。末梢動脈の拍動を確認する。末梢動脈にマジックで印をつけて、包帯交換時に拍動を必ず確認してもらうこと。
・院内に整形外科医がいない場合は、整形外科を受診するかを家族に聞く(麻痺、拘縮がある場合は手術適応にはならないことを伝え、転位しているので保存的に診た場合は骨折したままであること、痛みの程度、血管損傷はないことetcを説明する)。ムンテラの結果、整形外科は受診せずに院内でできる範囲で対応を希望されれば、その旨を必ずカルテに記載しておく。
急性胃腸炎
<急性胃腸炎>
<注意!!>
下痢の訴えで、実は軟便、臍周囲の鈍痛、食欲なしは虫垂炎!!
虫垂が長くて臍あたりまで来ていると考えるべし!!
もしくは腸捻転や絞扼!!痛みの部位に一致する腸管の狭窄/狭小化と口側の軽度拡張、少量腹水あれば疑うこと。痛みは強いはず。
☆嘔吐、臍周囲の腹痛、水様性下痢のtriasが揃って初めてウィルス性胃腸炎と診断できる。
☆嘔吐から始まって水様性下痢になるのが普通。
☆嘔吐が激しく、食べられないときは補液するのが親切。
☆39度以上の発熱、濃粘血便、激しい腹痛、しぶり腹(tenesums)のどれかがあれば細菌性腸炎を疑って、ミヤBM3g分3、ホスミシン250mg4錠分4処方する。重篤であれば便培養と赤痢アメーバの抗体検査をする(セキリアメーバAB:FA)。
☆老人の脱水でGFR低下時は入院を。
☆水様性下痢、腹痛、嘔吐のtriasがそろってない時は、虫垂炎、子宮外妊娠、腸閉塞(特に絞扼性)、出血性胃潰瘍を否定すること。
☆ウィルス性の胃腸炎なら2~3日で治る。整腸剤のミヤBM3包分3~12T/3x、ブチブロン1T頓服、下痢止めのロペラミド2T分2を処方し帰宅。
☆3~5日前くらいにイカ、サバを食べたのならアニサキスIgG抗体を測定する。
☆腸炎が長引いているのならアレルギー反応かもしれないのでIgE indexを調べる。
☆食あたりの発症時間
・黄色ブドウ球菌:おにぎりなど、2〜3時間
・サルモネラ:鶏卵、鶏肉など、6〜72時間
・ウェルシュ菌:カレーなど、12時間
・腸炎ビブリオ:生魚など、6〜20時間
・カンピロバクター:食肉(特に鶏肉)など、2〜3日
・病原性大腸菌:井戸水、多種の食物、3〜5日
吐血、下血、血便
<吐血、下血、血便>
☆フォロー中にBUNが上昇してきたときは消化管出血を疑うこと。Crが同時に上昇していても、出血による脱水が合併しているのかもしれないので、単なる脱水と即断しないこと。
☆咳の結果出た喀血、嘔吐の繰り返しで出た吐血、下痢の繰り返しで出た鮮血便は粘膜損傷の事が多い。軽症ならトランサミン処方で経過観察でも可。
☆吐血の色
・茶褐色~黒色⇒胃や食道からの慢性出血(炎症,潰瘍,腫瘍)
・鮮血⇒茶褐色の嘔吐を繰り返しているうちにMallory-Weisseを起した、GERD、静脈瘤(肝硬変)など
☆下血の色と出血部位
・真っ黒⇒上部、下血と言う。胃十二指腸潰瘍(PUGa/D)、胃癌、GERDなどを疑う。最終飲食時刻を聴取し緊急内視鏡の準備。
・暗赤色⇒下部、血便と言う。憩室出血は腹痛なし、右or左下腹部痛は憩室炎、CTで憩室ないなら虚血性腸炎(腹痛とともに普通便から徐々に軟便となり最後に下痢状の血便になる)、腹痛や炎症反応軽度、経口摂取可能ならクラビット100mg5錠分1処方し帰宅も可。大腸癌の場合もあるのでCFは必ず勧めること。
・真っ赤⇒血便と言う。直腸潰瘍(長期臥床、E入りキシロカインを含んだガーゼを直腸に充填し帰宅)、痔核(陥頓による痛みがなければヘモレックス軟膏2g処方し帰宅)、肛門周囲膿瘍(痔瘻ないか造影CTをすること)、裂肛(ヘモレックス軟膏2g処方し帰宅)。Hb低下あれば大腸癌かも。CFは必ず勧めること。
☆20代前後ならクローン病(+腹痛、下痢)やUC(+腹痛)も(どちらも高齢者でもピークあり)。血沈とHbのチェック。CFは必須。
☆初期対応
・普段より血圧低下、頻脈、じとっとした皮膚(冷汗)あればルート確保し、ラクテック+チチナ1A+リカバリン1A、オメプラール1A+生食100ml点滴(生食20mlに溶いて静注も可)。
・モニター装着、血ガスでHb/Lac/pH/BEチェックして、ふらつき/頻脈/起立性低血圧/Hb低いならRCCオーダーと輸血同意書を取っておく。
・肝硬変による静脈瘤の可能性低いならNGで上か下か確認してもよい。鼻出血でも黒色便になるし、NGでも胃からか鼻からかは分からない。慢性出血で嘔吐を繰り返しての吐血はMalloryWeisse症候群の可能性あり。
・基本は緊急内視鏡。
・入院になるならCA19-9とCEA/ピロリ抗体/クロス血/入院時採血セット/ECG/胸写/入院時指示。
☆緊急でないならゆっくり病歴(最終飲食時刻、喫煙、アルコール)、身体所見(明らかな下血なければ直腸診と便潜血)、憩室炎で下腹部痛あるときは炎症反応上がる(なければ憩室症)。
☆内視鏡操作メモ
・右梨状陥凹(モニタの左側)に来たら、カメラを下向きにして、本体を持っている左手を右上に持ち上げてカメラをそっと押すと入る。
・SDJではスコープを持っている右手で反時計に回しながら挿入する。
・十二指腸の1st portionに入ったらカメラを上向きにして、本体を持っている左手首を巻き込むように右に回すと2nd
portionに入るので、少しカメラを引き戻すとさらに入っていく。
・食道に入ったらまず洗浄する。食道の血管がなくなっているところがSDJ。
・胃内の血管が透けて見えるところは萎縮性胃炎。
・胃内でJターンしたときにニュースカレークを吸引する。
注)便が黒いからと言って消化管出血とは限らない!
・鉄剤やマドパ(レボドパ)+マグミット内服中も便が黒くなる。マグミットに内服してると下痢状にもなり、タール便と紛らわしい。鉄剤による黒色便はやや緑がかっており、あまり臭くないのが特徴で、鉄剤を休薬すると3日程度で色が戻る。
注)メネシット、マグミット内服中で口腔内に黒色物が付着し、吐血と間違うことあり。
カテ熱(CRBSI:catheter related blood stream infection)について
☆カテ熱(CRBSI:catheter related blood stream infection)について
・カテーテル刺入部の排膿、発赤、圧痛あればすぐにカテ抜去(しかし、このような場合は稀)。septic
shockの場合は感染源を疑うなら血培採取後、カテを入れ替えて広域の抗生剤(MEPM+VCMあたり)、shockの治療に入る。血行動態が安定しているなら抗生剤を開始しながら血培の結果を見て判断してもよい。通常はカテ抜去だけで熱が下がる。
⇒カテが入っている人の熱で他に熱源がなさそうであればカテ抜去し、末梢点滴+抗生剤(S/A等)で様子見るのが基本。
・sepsisを疑う場合、熱がないから血培をとらないのはナンセンス。低体温はより危険。
・カテーテルが入っていて、熱源がはっきりしない場合はカテーテル感染を必ず疑うこと。
・カテ熱で刺入部に発赤がみられるのは3%程度。原因菌の8割はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌という弱毒菌のため、局所に炎症を生じにくい(∴抜去だけで熱が下がる)。
・カテ熱で状態が悪く、カテ先培養と血液培養で同じ菌種(グラム陰性桿菌、MRSA、カンジダsp.、黄色ブドウ球菌、腸球菌、真菌、抗酸菌など)が同定された場合は、カテ抜去で末梢で様子見るのがベター。違う部位からカテ挿入してもいいが、ガイドワイヤーを使っての入れ替えは禁忌。
・カテ熱(カテーテル関連血流感染症:CRBSI)の診断基準:
基準(1):1回もしくは複数回の血液培養から病原体が確認される。さらに 血液から培養された微生物は他の部位の感染に関係がない
基準(2):以下の症状や徴候が少なくとも1つある
①発熱(>38℃、熱型の特徴はspike fever)、悪寒戦慄、低血圧
②徴候や症状そして陽性の臨床検査結果が他の部位の感染に関係がない
③一般の皮膚汚染菌(類ジフテリア、バシラス属、Propionibacterium属、CNS、ビリダンス群溶連菌、ミクロコッカス属)が別々の機会に採取された2回以上の血液培養検体から培養される。
基準(3):微生物学的診断
①カテーテル先端の培養(定量or半定量)の検出菌=末梢静脈血からの検出菌
②カテーテル採血培養が末梢静脈血培養よりも2時間以上早く陽性になる
③カテーテル採血培養:末梢静脈血培養≧5:1
④カテーテル挿入部中心静脈血の定量培養(一般細菌≧100CFU/ml,真菌≧25CFU/ml)
cf)カテ熱の治療について
・血培2セット、カテ先培養を採取。
・まずは抜去する(大抵は抜去するとすぐに解熱する)。
・最大の原因菌は耐性ブドウ球菌で、βラクタムは耐性あるため、第1選択はバンコマイシン1g12時間おき。血液培養の結果を見てde-escalationする。
・超重症患者の場合はバンコマイシン(VCM)、メロペン(MEPM)、ミカファンギン(MCFG)を併用する。
cf)療養病院でのカテ熱
・療養病院でのカテ熱のほとんどは風呂熱である(入浴時にCVの保護テープ内にお湯が入り込む)
・CVのナート部位のアイテル(膿)は非感染性で針反応と思われるものもある。
・フルカリック2号でカテ熱疑いの場合はエルネオパNF1号に変えると発熱が収まる場合がある。
・ポート感染疑うときは、すぐ抜去するのではなく、ポートはヘパロックし末梢点滴と抗生剤に変更してみる(ヘパロックは週1で交換する)。
cf)CVカテーテル閉塞時の交換について
・ハサミでカテーテルの途中を切って、清潔操作でガイドワイヤーを挿入し、固定の糸を抜糸してからカテーテルを抜去する。
・その後はCV留置と同様の操作を行う。
参考1)
・5大医療感染症はHAP/VAP(ハップバップ)、CAUTI(カウチ)、CRBSI、SSI、CDI。CRBSIはCVCが原因の血流感染。診断には血液培養陽性が必須。カテ先培養は定量でなければ意味がない。他のfocusから菌血症を起こし、CVCに菌が付着によるものもある。カテーテル逆血培養1セット、末梢静脈から1セット採取し、カテーテル逆血培養の方が菌量の方が3倍以上多いか、カテーテル逆血培養の方が2時間以上早く陽性になればCRBSIと診断できる(菌量の比較は通常の検査室ではできないため)。診断にCVC抜去は必須ではない。末梢静脈カテーテルによるCRBSIも侮れない。菌はBIOFILMを形成して人工物に付着する。抗菌薬はBIOFILMの表面に効果あるだけでBIOFILM内部の菌には届かない。原因菌は表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、GNRの中でも特にSPACE(セラチア、緑膿菌、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)。SPACEは急変する可能性が高い。予防はマキシマルバリアプリコーションが大切。
参考2)
・CVC抜去せず高張液を浸透圧比1の等張液に変更(ソリタT3やソルデム1)するだけでも解熱することが多い。逆に高張液(ビーフリードやフィジオゾール3号)ではバイオフィルム内に浸透し細菌増殖の原因となる。
・CVC抜去しても解熱しない場合は人工弁などが無くても血管内の粥腫などにに感染がついているのかも。
・CVC穿刺困難な場合はCVCをガイドワイヤーを使って入れ替えるのも方法だが邪道。
☆カテ感染疑いで血培でカンジダが1セットで陽性になった場合
・βDグルカン陰性でも真菌感染は否定できない。
・カテ感染疑い+状態不良の場合、カンジダ、黄ブ菌、腸球菌は2セット中1セットでも陽性なら本物でコンタミではないと考えて治療開始する。
・血培からカンジダが採取された場合、通常ならコンタミであるが、カテが入っていて抜去しても熱が下がらない場合や、通常の抗生剤で効果がないときは抗真菌薬を投与する。
・逆に、IVH中でもなく、ケモ中でも免疫不全でもない場合は深在性真菌感染症の可能性はほぼない。
・カンジダ血症のリスク:免疫不全、手術後、ICU、CVC留置中、広域抗生剤使用、APACHEスコア高値、急性腎不全、未熟新生児、外傷、熱傷、埋め込み式人口装置、H2ブロッカー使用、カンジダ定着状態
・カンジダ感染症:IE、化膿性血栓性静脈炎、骨髄炎、髄膜炎の他に網膜炎も忘れずに
・カンジダ感染では眼底鏡を必ずチェックする
・C.albicansはフルコナゾール(FLCZ)が有効だが、C.glabra、C.kruseiはフルコナゾール無効なことがあり、ミカファンギン(MCFG)、アンホテリシンB(AMPH-B)を使う。クロモアガー培地で3つが判別できる。
cf)抗真菌薬について
・ファンギゾン(アンホテリシンB:AMPH-B)は25-50mg(0.5-1V)を5%ブドウ糖250-500mlに溶解して3-6時間以上かけて投与する必要がある(5%ブドウ糖で0.1mg/mlとする)。
・ファンギゾン自体に発熱の副作用があることに注意する。
・ただし、ファンギゾンは腎障害など副作用も強いので、ジフルカン(フルコナゾール:FLCZ/アゾール系)50-100mg(どちらも50mlの静注液)+生食100ml1日1回投与が無難。1日最大量は400mgまで。CCr50以上は通常用量、50未満は半量(HD時はHD終了後に通常用量)。
・ジフルカンはC.albicansには効くが、C.glabrata,C.kuruseiには無効。クリプトコッカスには効くがアスペルギルスには無効。
・1日2回だがフロリードF注(ミコナゾール:MCZ/アゾール系)200mg+生食100ml1日2回(ファンギゾンより副作用少ない)もファンギゾンより副作用少ない。併用禁忌はワルファリン、ピモジド、キニジン、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、ブロナンセリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、リバーロキサバン、アスナプレビル。
・アゾール系が無効な場合はキャンディン系のファンガード(ミカファンギン:MCFG)を使う。
蜂窩織炎/壊死性筋膜炎
<蜂窩織炎/壊死性筋膜炎>
★下肢では足背動脈の拍動を必ず確認する。
☆リンパ管浮腫ではワセリン塗布しおむつカバーを巻いて弾性包帯をし下肢拳上する。
☆ヒールによる拇趾の痛みは蜂窩織炎の可能性あり。基本は冷却し下肢拳上、化膿してきたら切開排膿し、L-ケフレックス(第1世代セフェムの徐放剤)1g2錠分2処方。
☆拇趾の蜂窩織炎は巻き爪が原因のことあり。外科コンサルトを。
☆重症例では血液検査、毎日外来でセファメジン(CEZ)2gバッグを30分かけて点滴し、半減期が1時間で半日しか効かないためオラセフ(第2世代セフェム)250㎎3錠分3経口(4錠分4ではない)も処方。
☆重症例ではDVTやPAD(PeripheralArterialDisease)を鑑別するため血管エコーをする。
☆小児の場合はオラスポアDS(ドライシロップ)30mg/kg/dayを分3、カロナール1錠5回分。
☆動物咬傷の場合はユナシン1.5gを生食50mlに溶いて30分で投与し、オーグメンチン250㎎3錠分3経口(4錠分4ではない)を処方(幼児や学童の場合は2錠分4と整腸剤)。
☆片側顔面腫脹なら丹毒(=顔面の蜂窩織炎)、眼球突出あるなら副鼻腔炎からの眼窩内蜂窩織炎か。片側なら内頚動脈海綿静脈洞瘻、両側ならBasedow病の鑑別を。
cf)壊死性筋膜炎との鑑別:
・強く痛がる、バイタル異常、疼痛範囲の拡大、皮膚色が黒いがあれば、初診、30分、1hr、2hrと病変部をマーキングし拡大傾向ないかチェックする。
cf)丹毒は真皮、蜂窩織炎は皮下組織、壊死性筋膜炎は皮下組織と筋膜の炎症