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当直メモ・薬剤メモ・各種文書の書き方 2019/12/3更新済み後全掲載5

当直メモ・薬剤メモ・各種文書の書き方 2019/12/3更新済み後全掲載5

内視鏡の肉眼分類

内視鏡の肉眼分類
逆流性食道炎
 GradeA5mmを超えない発赤
 GradeB5mm以上の発赤が1箇所以上
 GradeC:複数の粘膜襞を超えて発赤、全周の3/4を超えない
 GradeD:全周の3/4を超える発赤
・静脈瘤
 L(場所):Ls:上部、Lm:中部、Li:下部、Lg-c:噴門輪に近接、Lg-f:噴門輪と離れた胃静脈瘤
 F(形態):F0:静脈瘤なし、F1:直線状、F2:連珠状、F3:結節状
 C(色調):Cw:白色、Cb:青色、血栓化してる時はCw-Th,Cb-Thと記す
 RC(発赤):RC-:発赤なし、RC+:ごく少数、RC++++++の間、RC+++:全周に多数
 粘膜所見:E:びらん、UI:潰瘍、S:瘢痕
 治療対象はF1RC++F2RC+F3RC-以上のもの
 cf)肝機能異常認めない場合は単なる静脈拡張の場合あり
胃潰瘍
 A1:厚い黒色の苔、辺縁の浮腫著名、出血あり
 A2:辺縁浮腫軽減、白色輪、充血輪
 H1:白苔が薄い、ひだの集まりあり
 H2:潰瘍底が盛り上がる、薄い白苔
 S1:赤色瘢痕
 S2:白色瘢痕
・胃癌
 0型:m
 1型:腫瘤型
 2型:潰瘍限局
 3型:潰瘍浸潤
 4型:びまん浸潤
 5型:分類不能
・早期胃癌(m癌、0型胃癌)の分類
 0I:隆起型(正常粘膜の高さの2倍以上、2倍以下は0IIa
 0IIa:表面隆起
 0IIb:表面平坦
 0IIc:表面陥凹
・胃ポリープ
 山田I型:隆起の起始部が滑らかで明確な境界線なし
 山田II型:隆起の起始部が明確だがくびれなし
 山田III型:隆起の起始部にくびれあるが茎なし
 山田IV型:茎のあるもの
・大腸ポリープ
 Ip:茎あり
 Isp:隆起の起始部にくびれあるが茎なし
 Is:隆起の起始部が明確だがくびれなし
 IIa:隆起の起始部が滑らかで明確な境界線なし
 IIb:平坦なもの
 IIc:陥凹なもの
 LST:小さなポリープが塊になり側方に発育している
 LST-G:従来のポリープがいくつも集まっている
 LST-NG:平坦な病変が集まっている
・胃のNBI SEC(粘膜上皮直下毛細血管):癌化すると蛇行、間延び、ループ、口径不同
 MCE(腺窩辺縁上皮):癌化するとギザギザ、口径不同、消失
・大腸のpit pattern I:円形
 II:星状、乳頭状→過形成性ポリープ
 IIIs:正常より大きな円形→管状腺腫
 IIIL:正常より大きな円形、管状→腺腫、m
 IV:脳回状→管状絨毛腺腫
 VI:不整なpit→m癌、sm微小浸潤癌
 VN:無構造→sm浸潤癌


胃瘻交換

☆胃瘻交換
・バンパー型ボタンタイプ(カンガルーボタン)の場合
消毒
②PEG
の蓋を開けてオブチュレーターを挿入
オブチュレーターにガイドワイヤーを挿入
オブチュレーターを押し込んでバンパー部分を伸展
ガイドワイヤーを残してオブチュレーターとPEGを抜去
新しいPEGにオブチュレーターを挿入しバンパー部分を伸展させ、ガイドワーヤーに沿って挿入
ガイドワイヤーとオブチュレーターを抜去する
air
を注入し聴診で確認
ガストロ10ml(便秘なら15ml)を注入し体を少し揺さぶってレントゲンで確認する
・バルーン型チューブタイプの場合
新しいPEGチューブに蒸留水を注入しバルーンがどれだけの量で膨らむかを確認する
消毒
バルーン内の蒸留水を引き抜く
④PEG
チューブを引き抜く
新しいPEGチューブにキシロカインゼリーを塗り、瘻孔に沿って挿入する
蒸留水を注入し固定
air
を注入し聴診で確認
ガストロ10ml(便秘なら15ml)を注入し体を少し揺さぶってレントゲンで確認する
注意)療養病院でのCV入った胃ろう患者の胃ろう交換はあまりしなくてもよい。


終末期の予後予測ツール

終末期の予後予測ツール
PaPスコア(Palliative Prognosis Score)>
臨床的に見ての予後:1-2週なら8.5点、3-4週なら6.0点、5-6週なら4.5点、7-12週なら2.5点、13週以上なら0点(ここは分からない場合はPPIを使うと良い)
②Karnofsky Performance Scale
10-20なら2.5点、30以上なら0
食欲不振:ありなら1.5点、なしなら0
呼吸困難:ありなら1.0点、なしなら0
白血球数(/mm3)11000以上なら1.5点、8501-11000なら0.5点、8500以下なら0
リンパ球数(%)0-11.9なら2.5点、12-19.9なら1.0点、20以上なら0
⇒①
~⑥の合計:
 9点以上:余命は21日以下の可能性が高い
 5.5点以下:余命は30日以上の可能性が高い

cf)Karnofsky Performance Scale
100
:正常、臨床症状なし
90
:軽い臨床症状はあるが、正常活動が可能
80
:かなり臨床症状はあるが、努力して正常の活動が可能
70
:自分自身の世話はできるが、正常の活動、労働は不可能
60
:自分に必要なことはできるが、時々介助が必要
50
:病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
40
:動けず、適切な医療および看護が必要
30
:全く動けず、入院が必要だが死は差し迫っていない
20
:非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10
:死期が切迫している
PPIPalliative Prognostic Index)>
①Palliative Performance Scale
1020なら4.0点、3050なら2.5点、60以上なら0
経口摂取量:数口以下なら2.5点、減少しているが数口よりは多いなら1.0点、正常なら0
(消化管閉塞のため高カロリー輸液を施行している場合は0点とする)
浮腫:ありなら1.0点、なしなら0
安静時呼吸困難:ありなら3.5点、なしなら0
せん妄:あり(原因が薬物単独のものは含めない)なら4.0点、なしなら0
⇒①
~⑤の合計点:
 6.5点以上:予後は21日以下の可能性が高い
 3.5点以下:予後は42日以上の可能性が高い

cf)PPS(Palliative Performance Scale)
左から順番にみて、患者に最もあてはまるレベルを決定する。
100
%:100%起居している⇒正常の活動が可能で症状なし⇒ADL自立⇒経口摂取正常⇒意識レベル清明
90
%:100%起居している⇒正常の活動が可能でいくらかの症状がある⇒ADL自立⇒経口摂取正常⇒意識レベル清明
80
%:100%起居している⇒いくらかの症状はあるが努力すれば正常の活動が可能⇒ADL自立⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明
70
%:ほとんど起居している⇒何らかの症状があり通常の仕事や業務が困難⇒ADL自立⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明
60
%:ほとんど起居している⇒明らかな症状があり趣味や家事を行うことが困難⇒時に介助⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明または混乱
50
%:ほとんど座位か横たわっている⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒しばしば介助⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明または混乱
40
%:ほとんど臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒ほとんど介助⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明または混乱または傾眠
30
%:常に臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒全介助⇒経口摂取減少⇒意識レベル清明または混乱または傾眠
20
%:常に臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒全介助⇒経口摂取数口以下⇒意識レベル清明または混乱または傾眠
10
%:常に臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒全介助⇒マウスケアのみ⇒意識レベル傾眠または昏睡


酸素指示

☆酸素指示
通常の場合:
SpO2 93-97%を維持するように酸素増減」
もしくは、
SpO2 90%未満ならO2開始。90%以下なら1Lずつup97%以上なら1LずつdownMax10L、適宜offも可。」と記載する。
酸素
4L:カヌラ
5
7L:マスク
8L
~:リザーバーマスク
(*気切の場合は当然ながらこの指示はいらない)

COPD
既往ありの場合:
SpO2 88-92%
を維持するようにカヌラ0.5Lずつ酸素増減。5L以上は以下の通り変更。
4L:カヌラ
5
7L:マスク
8L
~:リザーバーマスク
cf)
酸素指示は正常ならSpO293-97%COPDなら88-92%を保つように酸素増減が正しい。
理由:SpO2 98%PaO2 100mmHgSpO2 98-100%PaO2 100-500mmHg⇒SpO2≧98%では高酸素血症が生じている可能性があるため、少なくとも97%以下に制限する。高酸素血症はCO2ナルコーシス、活性酸素による肺傷害、吸収性無気肺などの有害事象リスクがある。重症患者において高酸素血症は死亡リスクが増加する報告が多数あり、低酸素血症よりも死亡率が高まる報告も複数ある。


浮腫の原因

☆浮腫の原因
注意)溢水か脱水か
・下肢末端に浮腫があっても溢水とは限らない
・低Alb血症にて浮腫を起こしていても皮膚乾燥あれば溢水ではない
・下肢末端だけの浮腫かつ皮膚乾燥なら利尿剤は必要ない
あきらかな心不全の既往がない限りは体格小はアミノトリパ1850ml、体格大はフルカリック11000mlくらいから開始し、下肢全体の浮腫が来たらラシックス1A+生食100mlなど追加、皮膚乾燥出てくれば、点滴量を追加していく(療養病院の場合)
原因不明の下肢浮腫の3/4は静脈うっ滞やリンパ浮腫心不全DVT、骨盤内悪性腫瘍をとりあえずは否定することが大切。
<全身性のことが多い>
・肝機能、腎機能、心機能をチェックする。
Alb2.5以下であれば浮腫の原因になりえる(肝疾患、蛋白漏出性胃腸症、低栄養)。
・薬剤が原因になることもある。例:NSAIDs,Ca拮抗薬,甘草(漢方),Na(抗生剤の点滴),ステロイド,リリカ,ACEI,抗がん剤など
甲状腺機能低下症
<片側性のことが多い>
深部静脈血栓症:腫脹が中心、両側性のこともある
蜂窩織炎:発赤や熱感、疼痛が中心
リンパ浮腫:皮膚が硬い、下肢挙上で改善しない、骨盤内の癌や乳がん手術、リンパ節郭清が原因。軟部組織感染を繰り返しやすいのでフットケアが重要(下肢挙上や弾性ストッキングも有効だが静脈うっ滞ほどは有効ではない)
・静脈うっ滞:皮膚は軟らかい圧痕性、毛細血管拡張>静脈瘤>浮腫>色素沈着、静脈うっ滞性皮膚炎>潰瘍。車椅子や臥床の時間が長いことが多い。患肢挙上やマッサージ、弾性ストッキングが有効。
cf)
浮腫の鑑別:
脛骨前の浮腫を押しても直ちに戻る場合(non-pitting edema):リンパ浮腫(直腸がんや婦人科領域の悪性腫瘍)、甲状腺機能低下症、血管性浮腫(毛細血管透過性亢進)
圧痕が5秒程度残る場合(fast edema):低Alb血症(2.5g/dl以下、Albが低いほど間質の水分が増えて圧痕がより速く戻る)→低栄養、ネフローゼ、肝硬変
片側の浮腫:蜂窩織炎(訴えの割には皮膚所見が乏しい場合や急速に広がる場合は壊死性筋膜炎を疑うこと)、DVTリンパ浮腫(解剖学的に左総腸骨静脈は右総腸骨動脈に圧迫されているため、左下肢は生理的に浮腫が生じやすい)
両側の浮腫:腎不全、肝不全、心不全甲状腺機能低下症
眼瞼の浮腫:下眼瞼のみなら心不全、全周性なら低ALB血症
手背の浮腫:RS3PEremitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)症候群による左右対称性の滑膜炎による圧痕性浮腫
口唇の浮腫:血管性浮腫(遺伝性血管性浮腫、Quincke浮腫、好酸球性血管性浮腫)、薬剤誘発性血管性浮腫→「喉の違和感」 「呼吸困難」の有無をチェックし、ペニシリン系抗菌薬、降圧薬(ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、アスピリンなどNSAIDs服用歴ないかチェックする
⑧Ca
拮抗薬、NSAIDs、甘草などは浮腫の原因となりえる。
車椅子や寝たきり状態では下肢筋肉のポンプ機能が低下し、不動性浮腫やchair edema、麻痺側の静脈はうっ滞しやすい。


PSAについて

PSAについて
4ng/ml未満は前立腺がんは否定的。
4-10gray zoneF/T比(遊離型/PSA)が0.15以上ならBPH前立腺炎の可能性が高い。
10以上は前立腺がんの可能性が高い。
50-64歳は3ng/ml以下、65-69歳は3.5ng/ml以下、70歳以上では4ng/ml以下が正常値。
・これらを超えてくるようであれば泌尿器科受診を。
・根治的前立腺全摘術後であれば測定以下になるはず(でなければ全摘ではない)。その後にに0.2ng/mlを超え、1ヵ月後にも連続して0.2以上であれば再発と考える。泌尿器科受診を。



IVH後に肝機能異常をきたした場合

IVH後に肝機能異常をきたした場合
アミノ酸負荷によるものが多い(BUN↑
・以下のように変更していき、肝機能をフォローしていく
フィジオ35 500ml(うち1本にはシーパラ1Aを混注)を3-5日間
フィジオ35 500ml50%ブドウ糖20ml5A13回(うち1本にはシーパラ1Aを混注)を3-5日間
ビーフリード500ml50%ブドウ糖20ml5A11回、フィジオ35 500ml50%ブドウ糖20ml5A12回を3-5日間
ビーフリード500ml50%ブドウ糖20ml5A12回、フィジオ35 500ml50%ブドウ糖20ml5A11回を3-5日間
エルネオパ11000ml、フィジオ35 500ml50%ブドウ糖20ml5A11回を3-5日間
エルネオパ11500ml3-5日間
エルネオパ21500mlに変更


CEA軽度上昇について

CEA軽度上昇について
・健診にてCEAが軽度上昇で精査依頼されることがある。
・健診日と受診日が開いている場合は採血して再検する。
CEA10ng/ml以下でも検査希望ならGFCF、胸腹部CT甲状腺機能をチェックする。異常なく、さらなる検査希望であれば乳腺、婦人科を紹介する。
CEA10ng/ml以上ならGFCF、胸腹部CT施行し、毎月のCEAフォロー。
・自費診療も厭わないならPETをしてみるのがいいだろう。
cf)
ちなみに、自費ではGF9000円、CF25000円、腹部US6000円、腹部CT9000円位。
・喫煙、下痢、糖尿病、加齢、気管支炎、慢性膵炎、慢性肝炎、肺結核クローン病胃潰瘍、萎縮性胃炎、肺線維症、腎不全、子宮内膜症でも偽陽性になる。
・正常人の0.3%10ng/mlを越える。潰瘍性大腸炎4.0%、肺疾患5.0%、肝硬変7.0%、腎疾患10.0%のほか直腸ポリープや肝炎で2%以下で10ng/mlを超えることがある。
・悪性疾患では大腸癌54.7%>肺癌24.5%>胃癌21.6%>乳癌16.2%>卵巣癌12.2%10ng/ml以上となる。
・喫煙者は0.6%10ng/mlを越えるが、通常は10ng/ml以下で、5ng/mlを越えるのは6.9%である。


カテ熱(CRBSI)について

☆カテ熱(CRBSIcatheter related blood stream infection)について
カテーテル刺入部の排膿、発赤、圧痛あればすぐにカテ抜去(しかし、このような場合は稀)。septic shockの場合は感染源を疑うなら血培採取後、カテを入れ替えて広域の抗生剤(MEPM+VCMあたり)、shockの治療に入る。血行動態が安定しているなら抗生剤を開始しながら血培の結果を見て判断してもよい。通常はカテ抜去だけで熱が下がる。
カテが入っている人の熱で他に熱源がなさそうであればカテ抜去し、末梢点滴+抗生剤(S/A等)で様子見るのが基本。
sepsisを疑う場合、熱がないから血培をとらないのはナンセンス。低体温はより危険。
カテーテルが入っていて、熱源がはっきりしない場合はカテーテル感染を必ず疑うこと。
・カテ熱で刺入部に発赤がみられるのは3%程度。原因菌の8割はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌という弱毒菌のため、局所に炎症を生じにくい(∴抜去だけで熱が下がる)。
・カテ熱で状態が悪く、カテ先培養と血液培養で同じ菌種(グラム陰性桿菌、MRSAカンジダsp.黄色ブドウ球菌、腸球菌、真菌、抗酸菌など)が同定された場合は、カテ抜去で末梢で様子見るのがベター。違う部位からカテ挿入してもいいが、ガイドワイヤーを使っての入れ替えは禁忌。
・カテ熱(カテーテル関連血流感染症CRBSI)の診断基準:
基準(1)1回もしくは複数回の血液培養から病原体が確認される。さらに 血液から培養された微生物は他の部位の感染に関係がない
基準(2):以下の症状や徴候が少なくとも1つある
発熱(>38℃熱型の特徴はspike fever)、悪寒戦慄、低血圧
徴候や症状そして陽性の臨床検査結果が他の部位の感染に関係がない
一般の皮膚汚染菌(類ジフテリア、バシラス属、Propionibacterium属、CNS、ビリダンス群溶連菌、ミクロコッカス属)が別々の機会に採取された2回以上の血液培養検体から培養される。
 
基準(3)微生物学的診断
カテーテル先端の培養(定量or定量)の検出菌=末梢静脈血からの検出菌
カテーテル採血培養が末梢静脈血培養よりも2時間以上早く陽性になる
カテーテル採血培養:末梢静脈血培養≧5:1
カテーテル挿入部中心静脈血の定量培養(一般細菌≧100CFU/ml,真菌≧25CFU/ml)
cf)
カテ熱の治療について
・血培2セット、カテ先培養を採取。
・まずは抜去する(大抵は抜去するとすぐに解熱する)。
・最大の原因菌は耐性ブドウ球菌で、βラクタムは耐性あるため、第1選択はバンコマイシン1g12時間おき。血液培養の結果を見てde-escalationする。
・超重症患者の場合はバンコマイシン(VCM)、メロペン(MEPM)、ミカファンギン(MCFG)を併用する。
cf)
療養病院でのカテ熱
・療養病院でのカテ熱のほとんどは風呂熱である(入浴時にCVの保護テープ内にお湯が入り込む)CVのナート部位のアイテル()は非感染性で針反応と思われるものもある。
・フルカリック2号でカテ熱疑いの場合はエルネオパNF1号に変えると発熱が収まる場合がある。
・ポート感染疑うときは、すぐ抜去するのではなく、ポートはヘパロックし末梢点滴と抗生剤に変更してみる(ヘパロックは週1で交換する)
cf)CV
カテーテル閉塞時の交換について
・皮膚をカテーテルごとイソジン消毒し、覆い布をかける。
・ハサミでカテーテルの途中を切って、清潔操作でガイドワイヤーを挿入し、固定の糸を抜糸してからカテーテルを抜去する。
・その後はCV留置と同様の操作を行う。
参考1
5大医療感染症HAP/VAP(ハップバップ)、CAUTI(カウチ)、CRBSISSICDICRBSICVCが原因の血流感染。診断には血液培養陽性が必須。カテ先培養は定量でなければ意味がない。他のfocusから菌血症を起こし、CVCに菌が付着によるものもある。カテーテル逆血培養1セット、末梢静脈から1セット採取し、カテーテル逆血培養の方が菌量の方が3倍以上多いか、カテーテル逆血培養の方が2時間以上早く陽性になればCRBSIと診断できる(菌量の比較は通常の検査室ではできないため)。診断にCVC抜去は必須ではない。末梢静脈カテーテルによるCRBSIも侮れない。菌はBIOFILMを形成して人工物に付着する。抗菌薬はBIOFILMの表面に効果あるだけでBIOFILM内部の菌には届かない。原因菌は表皮ブドウ球菌黄色ブドウ球菌MRSA)、GNRの中でも特にSPACE(セラチア、緑膿菌アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)。SPACEは急変する可能性が高い。予防はマキシマルバリアプリコーションが大切。
参考2
CVC抜去せず高張液を浸透圧比1の等張液に変更(ソリタT3やソルデム1)するだけでも解熱することが多い。逆に高張液(ビーフリードやフィジオゾール3号)ではバイオフィルム内に浸透し細菌増殖の原因となる。
CVC抜去しても解熱しない場合は人工弁などが無くても血管内の粥腫などにに感染がついているのかも。
CVC穿刺困難な場合はCVCをガイドワイヤーを使って入れ替えるのも方法だが邪道。
カテ感染疑いで血培でカンジダ1セットで陽性になった場合
酵母様真菌とあれば多くはカンジダ
βDグルカン陰性でも真菌感染は否定できない。
・カテ感染疑い+状態不良の場合、カンジダ、黄ブ菌、腸球菌は2セット中1セットでも陽性なら本物でコンタミではないと考えて治療開始する。
・血培からカンジダが採取された場合、通常ならコンタミであるが、カテが入っていて抜去しても熱が下がらない場合や、通常の抗生剤で効果がないときは抗真菌薬を投与する。
・逆に、IVH中でもなく、ケモ中でも免疫不全でもない場合は深在性真菌感染症の可能性はほぼない。
カンジダ血症のリスク:免疫不全、手術後、ICUCVC留置中、広域抗生剤使用、APACHEスコア高値、急性腎不全、未熟新生児、外傷、熱傷、埋め込み式人口装置、H2ブロッカー使用、カンジダ定着状態
・カテ感染の4大起炎菌:ブ菌、大腸菌緑膿菌カンジダ
カンジダ感染症IE、化膿性血栓性静脈炎、骨髄炎、髄膜炎の他に網膜炎も忘れずに
カンジダ感染では眼底鏡を必ずチェックする
C.albicansはフルコナゾール(FLCZ)が有効だが、C.glabraC.kruseiはフルコナゾール無効なことがあり、ミカファンギン(MCFG)、アンホテリシンB(AMPH-B)を使う。クロモアガー培地で3つが判別できる。
cf)
抗真菌薬について
・ファンギゾン(アンホテリシンBAMPH-B)は25-50mg(0.5-1V)5%ブドウ糖250-500mlに溶解して3-6時間以上かけて投与する必要がある(5ブドウ糖0.1mg/mlとする)。
・ファンギゾン自体に発熱の副作用があることに注意する。
・ただし、ファンギゾンは腎障害など副作用も強いので、ジフルカン(フルコナゾール:FLCZ/アゾール系)50-100mg(どちらも50mlの静注液)+生食100ml11回投与が無難。1日最大量は400mgまで。CCr50以上は通常用量、50未満は半量(HD時はHD終了後に通常用量)。
・ジフルカンはC.albicansには効くが、C.glabrata,C.kuruseiには無効。クリプトコッカスには効くがアスペルギルスには無効。
12回だがフロリードF注(ミコナゾール:MCZ/アゾール系)200mg+生食100ml12回(ファンギゾンより副作用少ない)もファンギゾンより副作用少ない。併用禁忌はワルファリン、ピモジド、キニジントリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、ブロナンセリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、リバーロキサバン、アスナプレビル。
・アゾール系が無効な場合はキャンディン系のファンガード(ミカファンギン:MCFG)を使う。


ワクチンについて

<総論>
ワクチンの種類
生ワク:ムンプス、風疹、麻疹、ポリオ、結核、水痘(生きるのは無風の進歩の結果です)。他は不活化かトキソイド。
接種方法
・筋注:HPV、経口:ロタ、皮内注:BCG、他は皮下注
・原則は不活化、トキソイドは局所反応が起こしやすいため深い場所に接種する必要があり、免疫反応が起こりにくいため血流の多い筋肉に接種するべきだが、筋注を指定しているのは現状はHPVワクチンのみ。従って、不活化、トキソイドは皮下深くに接種する。生ワクは局所反応が起きにくいため皮下注でよい。
・皮下注:上腕伸側の皮膚をつまんで30度の角度で針は16mm。筋注:肩の三角筋に垂直に針は25mm
cf)
橈骨神経は上腕伸側の中1/3において背側から腹側に斜めに下降するので、この部位での接種は橈骨神経の損傷を起こす危険性がある。従って接種部位は上腕伸側の上1/3または下1/3が適切である。
接種間隔
・不→不、不→生は1週間、生→不、生→生は4週間あける。
・同時接種は左右の上肢に1回ずつ別々に接種する。同側なら3-5cmあける。製剤同士は絶対に混ぜないこと。
・同日接種(朝に検診で接種し、その後来院し他のワクチンを接種)は自治体によっては2回目の保険が通らないこともあり。
副反応
軽微なもの:局所反応:疼痛、腫脹、発赤、硬結、全身反応:発熱、倦怠感、頭痛→数%にみられ、自然軽快する
cf)
インフルエンザワクチンによる発熱は当日~翌日、37度台~39度台まで様々。インフルエンザワクチン後に発熱することがあるが、抗体産生まで1週間くらいかかるので、ワクチンによる発熱かインフルエンザ感染による発熱かわからない。
生ワクによる原疾患類似の症状:麻疹、風疹ワクチンで発熱、全身の発疹→23日で軽快し、本来の麻疹、風疹ではないので伝染はしない
重篤なもの:アナフィラキシーショック(数千~数万分の1、接種後30分以内)、ADEM(急性散在性脳脊髄炎、数万~数十万分の1)、血小板減少性紫斑病
接種禁忌
重篤な急性疾患
当該ワクチンに対してアナフィラキシーショックの既往ある場合
免疫抑制状態:先天性免疫不全、ステロイド免疫抑制剤抗癌剤使用中
半年以内の輸血、γグロブリン製剤の使用歴(生ワクのみ禁忌、免疫応答が起こらない)
妊娠中の生ワク(特にMRワクチン)
卵アレルギーでの黄熱ワクチン(インフルエンザワクチンは重篤なアレルギーでなければ接種可)
エリスロマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンアレルギーに対する麻疹、風疹、MR、ムンプス、水痘ワクチン
37.5℃以上の感冒や軽微な感染性腸炎は数日は接種見合わせ、麻疹後は4週間、風疹、水痘、ムンプス後は2-4週間、伝染性紅斑後は1-2週あけて接種するが医師の判断で接種も可能
・定期接種の重篤な副反応は予防接種法で補償、任意接種はPMDA医薬品医療機器総合機構)にて保障される
cf)
ワクチンの目標抗体価
麻疹EIA IgG 8-10倍以上、SRL 5-8倍以上
風疹HI IgG 16倍以上
水痘EIA IgG6-8倍以上
ムンプスEIA IgG 6-8倍以上
(医療従事者の場合は異なることがあるので要注意)
<各論>
☆B
型肝炎(任意)
・周産期感染(垂直感染)は95%がキャリア化→母子感染予防事業で0.024%まで低下
・乳幼児、小児に周囲のキャリアからの唾液感染、成人以降はSTDとして水平感染することあり、定期接種化が望ましい
・水平感染では30%が急性肝炎(うち2%が劇症化し致死率は70%)、数%がキャリア化
・定期化されたHib、小児肺炎球菌ワクチンと同時に2か月以降に接種すべき
・本来は筋注が望ましいが、皮下深く接種する
☆Hib
、小児肺炎球菌(定期)
髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎を予防する
・小児肺炎球菌は2013年から13価に変更(それまで7価)
Occult bacteremia(高熱だが全身状態が良好で感染巣が不明な小児での菌血症)はHib/肺炎球菌ワクチン2回接種児ではリスクは1%未満、接種なければ10%あり
破傷風(定期:DPT
・土の中にいるClostridium tetaniから感染する
100/年発生、発症すると致死率は20-50%DPTワクチンは乳幼児期に4回接種し、11歳でDT1回接種するが、10年ごとにブースター接種が必要
・汚染された外傷では、
 DPT接種なしか不明なとき:テタノブリン筋注、その場で対側の三角筋Td1回接種、1M後に2回目、6-12M後に3回目 
 DPT接種ありで最終接種から5年以上ならその場でTd1回接種、5年未満なら予防必要なし
(定期化されたのは昭和43年以降なので昭和43年以前に生まれた人はDPT接種なし)
百日咳(定期:DPT
・新生児から乳幼児の致死率が高い
・ワクチンは生後3か月以降
・成人のアウトブレイクから感染するため周囲の人はワクチンで防御する必要あり
アメリカでは2011年のアウトブレイクを受けて、全成人と妊婦(不活化なので接種可)にDPTワクチンを接種を進めた
DPT0.5mlを成人に接種すると発熱、局所反応(自然軽快するが)が起こりやすいので0.2mlにし、0.2mlで十分に免疫力を得られる(Tdapは日本は未承認)
麻疹、風疹(定期:MR
・日本は麻疹輸出国、麻疹は年間300人、先天性風疹症候群は年間16人発症している
南北アメリカは麻疹、風疹を排除できている
1歳と就学前(56歳)の2回接種する
・生ワクなので妊婦には禁忌
cf)
ワクチン接種後に抗体価が上昇しない場合
・風疹ならEIA IgG8.0未満、ムンプスなら4.0未満であれば再接種。
2回目の接種でも抗体上昇を認めないなら接種製剤を変える(違う会社のものにする)と効果がある。
・風疹ワクチン接種後2ヶ月間は避妊が必要だが、風疹ワクチン接種後に妊娠が判明した場合でも、これまではワクチン接種による先天性風疹症候群の報告はない。
日本脳炎(定期)
・ブタからアカイエカを介して感染
・ほとんどは不顕性で発症するのは0.1-1%。しかし発症すると致死率は20-40%、神経学的後遺症は45-70%・ワクチンは6か月から接種可能だが、日本では推奨接種年齢が3歳となっている(しかし、現実は新生児、乳児期にも蚊に刺されるリスクあるので6か月で接種するのが望ましい)
・九州と四国地方での報告が多い
水痘(任意)
・空気感染する上、90%が顕性感染なのでアウトブレイクを非常に起こしやすい
・致死率は10万人あたり1-14歳で1人、15-19歳で2.7人、30-49歳で25
・多彩な合併症:二次性皮膚細菌感染、二次性細菌性肺炎、一過性小脳失調、髄膜炎2%未満で20週以下の妊婦で先天性水痘症候群、将来の帯状疱疹のリスク
・ワクチンは2回接種が望ましい(13歳未満は3か月間隔、13歳以上なら4週間空けて)
・通常は1歳で1回目、就学前(56歳)で2回目
・暴露後接種が有効なので、水ぼうそうの児に接触した場合はすぐに接種する(特に兄弟の一方が発症したらもう一方に必ず接種する)。72時間以内なら90%5日以内なら70%で発症を防げる。
ムンプス(流行性耳下腺炎)(任意)
・特に問題になるのは難聴で年間650人、不顕性によるものは年間2500人。片側だが、聴力予後は極めて悪い。
・水痘以上に多彩な合併症:髄膜炎脳炎、精巣炎、卵巣炎、乳腺炎、膵炎、流産、心筋炎、腎機能障害、小脳失調、ギランバレー症候群
2回接種が必要。1回目は1歳、2回目は就学前(56歳)。キャッチアップは4週間空けて行う。
☆HPV
ワクチン(定期)
・不活性化で初めて筋注指定
・子宮頸部上皮内腫瘍を95%減らしたが子宮頸癌を減らしたevidenceはない
4価ワクチンでは尖圭コンジローマも予防できる
・子宮頸癌関連の16価の血清型のうち2価もしくは4価のみの予防のため、20歳以降の子宮頸癌検診の受診が必要
20136以降は接種後の重篤な有害事象が複数報告があり定期接種のままだが、積極的な接種勧奨は差し控えられている
・ワクチンと有害事象の因果関係は不明
・感染経路はSTDのみ。sexually activeでなければすぐに接種が必要というわけではない。
成人肺炎球菌ワクチン(任意)
・成人用はPPSV(Pneumococcal Poly Saccharide Vaccine/13/ニューモバックス)、小児用はPCV(Pneumococcal Conjugate Vaccine/7/プレベナー)
PPSVはもともと小児用として開発されたが、成人でのみ抗体価を上げた。PCVPPSVの製剤に加工し免疫反応を起こしやすくしたもの。
PPSVが市中肺炎を減らしたというevidenceはない。IPD(肺炎球菌関連の髄膜炎や敗血症)を減らす。
・肺炎は予防しないが重症化を防ぐワクチンであると理解する。
老健施設でのHNCAPを減らしたevidenceはある。
・無脾の人はIPDのリスクが高いので必ず接種する。2歳以上であればPPSVの接種は保険適応あり。
2回目以降の接種は禁忌ではないが、局所反応や全身反応が強く出ることに注意する(以前は再接種は禁忌だった)。
・無脾の人で以前接種した人は5年以上経過したなら65歳以上で2回目接種する。
・インフルエンザ流行期には同時接種も可能だが、現実的にはインフルエンザワクチンの1週間後、必要あれば肺炎球菌ワクチンを接種。
・呼吸器学会のアルゴリズムでは65,70,75,80…歳(5の倍数)ならニューモバックスを定期で接種し、5年以上あけて再接種(任意)、中途半端な年齢ならプレベナーを接種し、次の5の倍数の年齢時にニューモバックスを定期(2回目以降のニューモバックスは任意)で接種する。


ペースメーカー植え込みや胃瘻患者の死後対応

☆ペースメーカー植え込みや胃瘻患者の死後対応
・皮膚切開し、ペースメーカー本体を取り出す。本体は皮下に糸で固定されていることが多いが、大胸筋の内側に固定されて皮膚の上からは触れないこともあるので注意する。リード線は引き抜かなくてよい。本体からハサミで切り離せばよい。
・摘出する前に家族にペースメーカーを摘出すること、皮下出血認める場合があることなどを説明する。摘出しない場合は火葬時に破裂することがあり、葬儀業者にペースメーカーがあることを伝えることを説明する。破裂するのは火葬開始後30分以内のことが多い。
・取り出した本体は感染廃棄物として処理する。
死後の胃瘻処置
・胃瘻チューブの根本をハサミで切って胃内に落とす。受針器と丸針で縫合し胃瘻孔をふさぐ。ピンク針ではやりにくいので丸針と受針器を使うとよい。


医療区分について

☆医療区分について
・医療区分によって入院基本料(マルメ料)が変わる。ただし、療養病棟でも人工呼吸器は出来高算定。
PEGEDtubeで経腸栄養しているだけなら区分1
CVあれば区分3
・モニター(医師及び看護職員により常時監視および管理している状態)あれば、モニタ装着していた日数だけ区分3。ただし、吸痰や酸素投与が必要。モニター単独なら区分2
・末梢点滴だけでも、11000ml以上していれば実施した日付のみ区分3(ただし1か月に7日まで)。
・「24時間点滴加療が必要」は末梢点滴を指していて1週間しかできない。IVHの場合は「中心静脈点滴を行っている」だけでよい(2つ同時にはできない)。
18回以上の吸痰あれば区分2(吸痰回数はバイタル表に記載あるはず)。
・気切しているだけなら区分2、発熱伴えば区分3
・画像、採血にて肺炎診断した上で治療しているなら区分2(治療期間のみ)。
・尿検査を実施し細菌尿もしくは尿中WBC10個以上で尿路感染で治療しているなら区分2(治療期間のみ)。
・酸素投与は3L以上なら区分32L以下なら区分2。ただし、1か月全て区分3の酸素療法では査定されることが多い。
パーキンソン病あれば区分2、もやもや病や脊髄小脳変性症など特定疾患あれば区分2
・褥瘡治療している場合は区分2(治療期間のみ)。仙骨部褥瘡など病名に部位の記載が必要。
・週3回、13回以上血糖測定していれば血糖測定した日付のみ区分211回だけなら毎日でも算定されない)。
・区分13が混ざっているときは平均をとって、一番多い区分に合わせる


感染対策(インフルエンザ、ノロMRSAなど)

<感染対策(インフルエンザ、ノロMRSAなど)>
インフルエンザ対策
・潜伏期は2日間で、感染性のある期間は発症12日前から発症後57日の間。潜伏期間から感染力がある。
・迅速検査の感度50-70%、特異度90%なので、検査陰性でも絶対とは言えない。インフルエンザ疑いなら陰性でも感染対策をする。
・インフルエンザ流行期の対策
1)
外来では、①呼吸器症状ありならマスク着用、②手洗い励行、③インフルエンザが疑われる場合は待合室を分けるか、診察の順番を工夫する、④感染者用の診察室を用意する、⑤風邪症状がある場合は面会を控えるように指導する
2)
入院患者では、①インフルエンザ疑いの段階で個室対応(難しい場合はカーテン隔離)⇒翌朝に発熱続けば迅速検査の指示を出す、②患者が外に出るときはマスク着用、手指衛生を徹底してもらう、③入室時はマスク着用、手指衛生を確実にする。
3)
発症した患者では、①飛沫感染対策を発症後7日以上経過したら解除(あるいは発症後5日かつ解熱後2日、ただしこれは学校保健法で世界的には症状出現から5-7日間)
4)
暴露した患者では、①発症者とは別の個室で管理(原則5日間→潜伏期間が長くて5日間なので)、個室管理が難しい場合は、ワクチンを接種していなければタミフルの予防投与を行う(病院負担)。
5)
職員では、就業制限は原則として発症の日から最低5日間(発症後5日間かつ解熱後2日)→本当は7日間だが、現実的には5日間となる
注意)療養病床でインフルエンザ流行時に個室管理が推奨される場合
・咳やくしゃみの頻度が高い患者
・酸素投与中の患者
・人工呼吸管理下にある患者 

ノロウィルス感染対策
アウトブレイクしやすい理由は、①感染力が強い(100個以下の少ない量でも感染が成立)、②アルコール無効
・ウィルス性胃腸炎(冬季下痢症)はノロウィルスだけではない。アデノウィルスやロタウィルスもあり、感染力は高い。
・診断はPCRがベストだが、迅速検査は感度50%、特異度85%(→陰性でも否定はできない、陽性者のみに対策していると蔓延しやすい)。検査会社の感度、特異度はあてにならない。臨床研究での感度、特異度とは違う。
・潜伏は1-2日間、下痢の症状が消失してから7日間、免疫不全者の場合は2週間はウィルスが排出される
・職員が冬季下痢症になった場合は症状消失まで就業禁止とする(症状消失後7日間は排出があるため拡散防止に努めること)。
12-3月に急激に生じた嘔気嘔吐、腹痛、水様性下痢の3つのうち2つを満たせばノロウィルスに準じた対策をする。
・吐物、糞便の処理方法(ノロウィルスに限定しない)
1)
手袋、エプロン、マスクを着用
2)
吐物の周囲2mくらいを汚染範囲と考えて処理する
3)
吐物の周囲2mくらいを使い捨てのペーパータオルで外側から内側に向けて静かにふき取る。ふき取ったペーパータオルはビニール袋に入れて感染性廃棄容器に廃棄する。
4)
ふきとった場所を1000ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませたペーパータオルでふき取る(次亜塩素酸Naは金属腐食性があるので後で水拭きをしておく)
5)
新しい次亜塩素酸Naをしみ込ませたペーパータオルで靴やスリッパをふき取る
6)
汚染範囲の清掃を清掃担当者に依頼する。

MRSA
を始めとする多剤耐性菌の理想の感染対策
・具体的な感染対策
1)
アルコールによる手指消毒を徹底する。
2)
感染と保菌は区別せずに個室管理し、入室者はエプロン、手袋、マスク(当然、部屋から出るときはマスクも含め廃棄する)着用。
3)
保菌者の手や服にも付着しているが、周りの机など環境表面にも付着している。患者に接しなくても環境表面から付着するため、大部屋の別の患者を診察する時にも逐一アルコール消毒をする。
4)MRSA
に効果のある薬剤を終了して48時間以上、もともとMRSAが出た部位および鼻腔のそれぞれが3回連続で培養陰性になれば隔離解除。
5)5
分に1回は無意識に顔を触っているので、マスクで伝播を防ぐ目的もあるため、MRSAは空気感染や飛沫感染はしないが、マスクは必要。MRSA保菌者の診察をした69%の確率で汚染される。白衣は毎日洗濯する。
・バクトロバン鼻腔用軟膏2%の塗布方法
用法・用量:通常、適量を13回鼻腔内に塗布する。
1)
綿棒の先にチューブからあずき粒程度の薬剤をとる。
2)
まず、片側の鼻腔内に塗布し、次にもう片方の鼻腔内にも同じ量を塗布する。
3)
薬剤を均一に伸ばすため、塗布後、両側の鼻翼の上からよくマッサージする。
注意)MRSA除菌の必要性
・現実的には療養病棟での看取り患者のMRSA除菌はしない。
・急性期ではMRSAの除菌をせずに、患者が死亡した場合敗訴する可能性がある。
「市民病院に入院した患者がMRSA敗血症を発生し、転院先の大学病院で死亡。市民病院の担当医らのMRSA感染予防を怠った過失、当該過失と死亡との因果関係を認めた高裁判決」 福岡高等裁判所平成18914日判決 判例タイムズ1285234

多剤耐性緑膿菌MDRP)感染対策
・定義はIMP,AMK,CPFX3剤耐性
・対策は保菌、感染問わずに全例個室で接触感染予防策。
・準MDRP3剤中2剤に耐性ある場合)も全例個室にするべき。
G陰性桿菌(緑膿菌アシネトバクター、セラチア、大腸菌)は毒性が強く、エンドトキシン産生により重症化しやすい。耐性化すると抗菌薬が効かず危険。ERDPESBLも含め、多剤耐性グラム陰性桿菌をIMP,CPFX,AMK,CAZ(セフタチジム)のうち2剤耐性(R,I)のものと定義し、個室管理すべき。
・多剤耐性菌が出た時のカルテ記載:ご提出いただきました〇〇検体より院内規定による多剤耐性グラム陰性桿菌が検出されております。接触感染対策の開始をお願いします。
・具体的な感染対策:
1)
患者診察、処置前後でのアルコールでの手指衛生の徹底
2)
患者さんの使用する器具の固定(聴診器など)
3)
患者さんの手指衛生の徹底を指導
4)
個室にできるなら、個室管理とし、エプロン+手袋+マスク着用。

cf)
多剤耐性菌について
・多剤耐性菌の種類
MRSA
多剤耐性緑膿菌MDRP
多剤耐性アシネトバクターMDRA
ESBL
産生グラム陰性桿菌
カルバペネム耐性腸内細菌(CRE
・日本に限らず訴訟、賠償のNO1MRSA!→血液培養2セットは必ずとること
感染症法で全数報告(国、県)が必要な耐性菌
1)VRE
バンコマイシン耐性腸球菌)
2)VRSA
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)→日本では1例もない、Laboエラーのことも多い
3)CRE
(カルバペネム耐性腸内細菌)
4)MDRA
(薬剤耐性アシネトバクター)*
5)MDRP
多剤耐性緑膿菌)やMRSAは報告義務なし
・多剤耐性の定義:
IPM,AMK,CPFX
全てにRであれば多剤耐性とする
IPM
MIC>16
AMK
MIC>32
CPFX
MIC>4


梅毒検査について

☆梅毒検査について
STS×,TPHA×:未感染
STS○,TPHA×:感染初期もしくはBFP(生物学的偽陽性:妊婦、SLE、ワクチン接種後、肝疾患)
STS○,TPHA○:梅毒(治療開始)
STS×,TPHA○:既感染(ただしProzone Phenomenonの可能性もあるためSTS定量にてcheckすること。特にTPHA10倍以上の高値の場合)
cf)RPR
TPHAについて
・梅毒検査にはSTS(VDRL,RPR)TP抗原(EIA,TPHA,TPPA,FTA-ABS)2つがある。
RPR(STS,TP):梅毒感染で生じるカルジオリピン-レシチンへの抗体を見ており、梅毒感染から3-6週間後に陽性化する。治癒すると低下する。慢性炎症(Tb、肝炎、RASLE)、高齢者、ウィルス感染(ヘルペスHIV)、マラリア、予防接種、妊娠でも陽性になる(BFP)。
TPHA:梅毒に特異的な抗原を見ており、梅毒感染から6週間後に陽性化する。治癒しても陽性が持続する。
cf)BFP(
生物学的偽陽性)の原因:抗リン脂質抗体症候群、急性ウイルス感染症(EBV, 肝炎, 麻疹など)マイコプラズマ感染症クラミジア感染症、予防接種、妊娠など、他にはHIV、悪性腫瘍、頭位分娩、じんま疹、皮膚炎、脳梗塞SLE
cf)
高齢者の梅毒検査について(RPR+TPHA+の場合)
・高齢者なら多くの場合は活動性がないため治療は不要。
・原則はSTS(RPR,TP)定量16倍以上であれば無症状でも治療することが望ましい。第3期以上ではサワシリンカプセル250mg6錠分3もしくはミノマイシン100mg2錠分28-12週間投与し、投与終了後半年後にSTS(RPR)定量を測定し8倍以下なら治療成功。8倍以上なら治療失敗。
注)RPR+,TPHA+の場合でも現感染とは限らない
RPR+,TPHA+でもRPR<8,TPHA<280の場合は治癒後の梅毒の可能性が高い(やんちゃな夫から妻がもらった場合が多い)。FTA-ABS IgMで確認してもよい。
cf)
梅毒患者の針刺しの感染予防
ペニシリンG、アンピシリンの常用量を2週間内服する。


免疫抑制、化学療法開始時のHBV再活性化リスク評価について

☆免疫抑制、化学療法開始時のHBV再活性化リスク評価について
・免疫抑制、化学療法を開始する前に、まずHBs抗原を測定しHBVキャリアかどうかを確認する。
HBs抗原陽性のHBVキャリアは、HBV再活性化の高リスクなため、肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤を投与。
HBs抗原陰性例は、HBs抗体およびHBc抗体を測定して、陽性であれば既往感染者と判定する。
HBV既往感染例でも免疫抑制、化学療法を行うとHBVが再活性化するリスクがある。
HBc抗体、HBs抗体のうちどちらか一方しか測定ができない場合は、HBc抗体をまず測定する。ただし、HBc抗体陰性例でも再活性化が報告されている。ワクチン接種歴が明らかである場合を除きガイドラインに従う。
HBV既往感染者と判定した場合はHBV DNA量を測定し、原疾患治療を開始する前に、一度肝臓専門医にコンサルトする。
HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体が陰性であれば、HBVキャリアでも既往感染者でもないため、通常の原疾患治療を行う。
・副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、免疫抑制作用や免疫修飾作用を有する分子標的薬を用いた免疫抑制療法では、治療開始後少なくとも6ヵ月間は、月1回のHBV DNA量のモニタリングが推奨される。
・免疫抑制・化学療法中にHBV DNA量が2.1 log copies/mL(20 IU/mL)以上に増加した場合、直ちに肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤(エンテカビル)を投与する。
・通常、ALT/AST値などの肝機能障害の指標は、HBVの増殖から数ヵ月遅れて上昇する。
核酸アナログ製剤の効果発現には1ヵ月程度かかる。
ALT/AST値が正常値を超えて上昇してからでは、HBV DNA量が著しく増加し、核酸アナログ製剤の効果発現がHBVの増殖に追いつかないリスクがあるため、HBV DNA2.1 log copies/mL(20 IU/mL)以上になった時点で肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤の投与を開始する。
・その際、免疫抑制・化学療法を中止すると、原疾患の病態が増悪する可能性があるため、中止せずに肝臓専門医と相談する。


悪性症候群について

悪性症候群について
・急激なドパミン遮断による。Lドーパの急な中止や、抗精神病薬の使用が原因。
・高熱と高CPK血症があるのみで、筋強剛など錐体外路症状や自律神経症状が乏しい場合は一般的な悪性症候群NMS)の診断基準は満たさない(特徴は手足がガクガクガチガチになり、スッと伸びなくなる。ただし症状がはっきりしない不全型も結構ある。早めにダントリウム入れてもいいかもしれない)。
・じほう社の経管投与ハンドブックではマドパは粉砕可、簡易懸濁可。簡易懸濁では、55℃5分では溶けず、10分を要する。マドパはNGtubeなどから継続するのが無難。
・マドパー3錠なら、急にoffにしても問題ないことが多いが、3日づつ漸減するのが無難。
悪性症候群を起こすのはマドパー600mg900mg等、比較的投与量が多い時に見られる。それを突然に中止し、脱水などが加わると起こしやすい。
CPKは軽く500010000を越えることが多い。ダントリウムで回復しても、同じ抗精神病薬を使うと再発する。
ダントリウムによる筋弛緩作用のために、呼吸不全に注意する必要がある。悪性症候群は基本的に抗精神病薬の中止と補液で対応できることも多い。


S型アミラーゼ上昇時の鑑別

S型アミラーゼ上昇時の鑑別
・シェーグレン症候群、ミクリッツ、唾石、ウイルス性唾液腺炎、唾液腺腫瘍、アル中など。耳鼻科受診し鑑別を。
・肺癌や大腸癌、卵巣癌も鑑別に挙がるので、胸部と腹部のスクリーニングをすること。
・胸部CT大腸内視鏡、骨盤MRIが理想だが、現実はまず胸部X線、便潜血、腹部and/or経膣エコー。
・市販のサプリメントや精神的ストレス、歯ぎしり、やせ、でも上昇するらしい。
・マクロアミラーゼ血症も鑑別に入る。


胃癌のABC検診

☆胃癌のABC検診
H.ピロリ抗体価(HP)ペプシノーゲン法(PG)により採血だけで胃癌リスクをスクリーニングする。
A群:HP-/PG-B群:HP+/PG-C群:HP+/PG+D群:HP-/PG+D群はピロリ菌が生存できないほど萎縮性胃炎が進行)
・胃癌発生率:A群:年率0%B群:年率0.1%C群:年率0.2%D群:年率1.25%・ピロリ除菌療法、上部内視鏡B群以上で必要(D群での除菌は内視鏡所見、UBT、便中抗原から判断)。
ペプシノーゲンIPG-I)は胃底腺から分泌、PG-IIは胃全体から分泌される。胃炎ではPG-IPG-IIともに血中に逸脱するが、ピロリ感染では胃底腺が減少するのでPG-I/PG-IIは低下する。除菌してもすぐにPG-I/PG-IIは上昇しないことに注意。
PG-I/PG-II3以下で陽性(1+)とする。PG-I 50ng/ml以下かつPG-I/PG-II 3以下を(2+)PG-I 30ng/ml以下かつPG-I/PG-II 2以下を(3+)の判定とする。
Hピロリ抗体価10U/ml以上を陽性とするが、3U/ml以上10U/ml未満は陰性高値でUBTや便中抗原を検査し陽性であれば現感染とする。
HP抗体価が陰性(陰性高値でない)でも萎縮性胃炎が進んでいる可能性(D群)もあるが、その確率は0.1%程度と見られている。∴HP抗体価は99.9%は正しい。
・しかし、Hピロリ抗体価が3以下でも胃癌リスクなしとは判定できず、結局GFが必要になる。


ALP高値について

ALP高値について
γGTP上昇なければ骨疾患か、生理的。→整形外科コンサルト
γGTP上昇あり、T-BiL上昇あれば総胆管胆石など考慮。→腹部エコー
γGTP上昇あるが、T-BiL上昇なければミクロな胆汁うっ滞の可能性ありAMAM2測定し、上昇あればPBC疑い。→肝臓内科コンサルト
γGTP上昇あるが、T-BiL上昇なし、AMA陰性、M2陰性であれば薬剤を疑う。→薬剤チェック


CD関連腸炎での隔離の方法と隔離解除について

CD関連腸炎での隔離の方法と隔離解除について
VCM投与終了後に下痢が続くこともあるが、①腸管粘膜障害が改善していない、②腸管内の常在菌の乱れが回復していない、③低蛋白血症による腸管の水分の吸収不全、④蠕動機能が回復していない等によることもある。
CDMIC0.5-2μg/mlであり、VCMの腸管内濃度は4000μg/mlなため耐性化は考慮する必要ない。
VCMを投与してもCDが残ることがあるが、症状が消失した段階で接触感染対策を解除する(CDは健常人の5-25%から検出される)。
・下痢症状が消失していればCDトキシンの再検はせずに隔離解除してよい。
・病棟によっては、CDトキシン陰性を2日連続で確認してから隔離解除とする場合もある。
CD感染症を発症し回復した症例については隔離解除後も標準予防策(一般的な手洗い、防護用具着用)を行う。
☆CD
感染性下痢を疑うとき
CDトキシンの結果が出るまで時間差があるので、CDを疑う場合はあらかじめカーテン隔離、専用の聴診器などは結果が出る前にしておいたほうが良い。


療養病院での肺炎、心不全管理

☆療養病院での肺炎管理
・肺炎ばかりを見るのではなく、心不全などほかの併存疾患を注意深く観察する。
・「下腿浮腫や頸静脈怒張が出てきた」「尿量が減ってきた」などは心不全の徴候。
・肺炎が改善してきているにもかかわらず心不全が増悪していくこともある。
・「肺炎が治っていない」ではなく「心不全が増悪した」という可能性も頭に置いておくこと。
・抗菌薬投与が30日、90日、1年後の予後を必ずしも改善しない。
・寝たきり、サルコペニア、低Alb血症などの因子の影響が大きい。
NHCAPでは広域抗生剤使用が狭域よりも予後を悪化させる。
療養病院での心不全管理
・溢水だと血圧が上昇し、脱水だと血圧が下がってくる(∴血圧低下では利尿薬は用いない)。
・脱水でも頻脈になるし、心不全でも頻脈になる。
・尿量減少時の対応:明らかな心不全ある場合は利尿剤→明らかな浮腫がある場合も利尿剤→浮腫がない場合はとりあえず補液負荷を2-3日かけてみる→それでも尿量が増えない場合はCXRで両側(片測ではだめ)のうっ血像がないか確認したり、腎機能や電解質をチェックする→結果、心不全や腎不全であれば利尿剤


療養病院でのIVH管理まとめ

☆療養病院でのIVH管理まとめ
注意)異常があるからといって、すぐに抗生剤を開始したり、利尿剤を開始したりしないこと。
アミノトリパ1850ml+ビタジェクト1A+ソルデム3A200mlから開始(もしくはネルネオパNF11000ml)⇒安定していればフルカリック21000ml+メドレニック1Aに変更
cf)
基本は1000mlだが、男性や大柄女性にはソルデム3A200ml500mlを追加し1200-1500mlにしておく。
cf)
ターミナルでない場合は最低1000mlは入れておくこと。ターミナルとは低栄養が進行し浮腫と尿量減少(濃尿)が来た状態を指す。
cf)TPN
開始後、3日間は11回のBS測定を行うこと。知らずに高血糖から脱水になっている場合あり。
cf)
利尿剤の内服を中止した場合は点滴量を減らすこと。
熱があるならスルペラゾン(SBT/CPZ、後発:セフロニック、セフォン、ワイスタール全て同じ)1g+N/S100ml12回を5日間投与。改善あればさらに5日間追加し中止。改善なければMEPM0.5g+N/S100mlに変更し5日間投与する。それでも改善なければカテ抜去する。
cf)
フルカリック2号でカテ熱疑いの場合はエルネオパNF1号に変えると発熱が収まる場合がある。
cf)
終末期では肺炎と心不全は高率に合併し線引きが難しい。
頻脈が続くならワソラン1A+N/S100ml投与。改善なければジゴシン0.5A+N/S100ml連日投与から開始。
cf)
経管栄養時の頻脈発作の場合、ハーフジゴキシン1T(0.125mg)+プラビックス(クロピドグレル)75mg内服で改善することがある。
浮腫、SpO2低下、レントゲンでのうっ血像(butterfly shadowもしくは両側上肺野のうっ血像もしくは片側/両側胸水)の3つが全て揃えば(どれかだけではダメ)バルーン留置しラシックス1A+N/S100ml開始。改善あればラシックス中止(脱水になってしまうので漫然と継続しないこと)。
cf)
浮腫のみで利尿剤は開始しないこと。浮腫+SpO2低下であれば利尿剤を開始してもよい。
cf)
心不全による頻脈では利尿剤ではなく、ワソランやジゴシンを投与すること。
cf)③
、④の両方が認められるならラシックス1A+ジゴシン0.5A+N/S100mlから開始する。
cf)
メインを減らす場合はアミノトリパ1号をビーフリード500mlに変更するが、まずはラシックス投与のみで様子をみていく(メインを減らすのと利尿剤開始を同時にしない)。
尿量減少(濃尿)は皮膚乾燥やturgor低下あれば点滴(ソルデム3A500ml)を5日間追加し尿量を見ていく。高Na血症の場合は5TZ500ml1週間追加し改善あれば中止。
尿量減少(濃尿)でも浮腫や皮膚湿潤ある場合は低Albが原因の膠質浸透圧低下による血管内脱水なので点滴を絞っていく(アミノトリパ1850ml)。急性期病棟なら本来はアルブミン点滴+ラシックス持続投与+トロッカーのケース。
cf)
心不全や腎不全による尿量減少は原則は希釈尿である!
褥瘡あればメドレニック1Aを追加する。改善ないときはイントラリポス100ml+フラッシュ用生食)を週1回投与する。
茶色嘔吐あれば内服中止し、NGtube(マーゲンチューブ)を留置し開放、
ガスター1Aもしくはオメプラゾール1A+N/S100ml10日間投与し改善あれば中止。
点滴が思わぬスピードで入ってしまった時
拘縮が強いとCVカテが折れ曲がり点滴スピードの調節が難しくなる。姿勢や体位の変化で短時間で点滴が入ってしまう時がある(看護師の怠慢ではないので注意!)。血糖測定を指示し、3号液500mlを次の点滴更新までつなぐように指示すると良い。  


終末期で高Na血症なのに浮腫や胸水が生じる理由

☆終末期で高Na血症なのに浮腫や胸水が生じる理由
・経鼻栄養、胃ろう栄養では2年弱、高カロリー点滴は8ヶ月の生命予後。
・長期間の高カロリー点滴の結果、心不全になっていく。
・低栄養による低Alb状態が進行し膠質浸透圧を維持できずに漏出性胸水や肺水腫、浮腫を生じ、血管内は脱水となる(∴高Na血症=脱水-"血管内脱水"-なのに浮腫や胸水が生じる)。従って、胸水貯留を認めたら点滴量を絞っていく。血管内脱水では通常の脱水と同様に尿は少なく濃くなってくる。
・尿量を維持(臓器還流を維持)する目的で点滴量を増加させていけば胸水貯留が増悪し酸素化が不良になってくる。
・終末期の心不全と肺炎は効率に合併し、どちらも致命的なので明瞭に区別するのは難しい。
・肺水腫がある間は肺炎も完治するのが困難になる。
・したがって、やや脱水にしてでも補液調整していくのがよい。


胸水貯留を認めたら、輸液を絞るのは、正しい判断だと思うが、えてして熱発していることも多い。看護婦さんからすると熱発患者で輸液量を絞るのは合点がいかないようで、反論されることも多い。浮腫や胸水があるから、水分は足りているのに。看護婦が強く、輸液を絞れず、胸水貯留増悪が多い。偶然体温が正常になった時がチャンス。


終末期で痰詰まりによる死亡の場合の死亡診断書やICについて

☆終末期で痰詰まりによる死亡の場合の死亡診断書やICについて
・重症の原疾患(老衰、蘇生後低酸素脳症慢性閉塞性肺疾患、脳血管障害後遺症など)のために日常的に痰が多い状態で、呼吸筋疲労や嚥下反射の低下のため自己喀出がうまくできず痰が詰まったということをICする。
・突然の呼吸停止の原因が喀痰による閉塞とは限らない。脳機能の廃絶としての呼吸停止もある。
・直接の死因としては、肺炎もしくは呼吸不全(約1日)、慢性気管支炎(吸痰回数が18回以上になっていた期間)、その原因に原疾患(老衰、低酸素脳症慢性閉塞性肺疾患、脳血管障害後遺症など)を記載する。罹病期間は同疾患の診断時、老衰であれば廃用(食事が取れなくなった時期)となった時期からの期間を記載する。
1)窒息という表現は外因死に対して使われる。
2)厳密には急性気道閉塞(その原因は喉頭嚥下機能低下、その原因は脳血管障害後遺症など)となる。
3)厳密には鑑別疾患に肺塞栓症心筋梗塞、致死性不整脈が考えられる。
4WHOは疾患の終末像として心不全や呼吸不全を死因と記載するのは死因統計が不正確になるため書かないよう推奨しているが、明らかな病態としての心不全、呼吸不全を記入することは問題ない。


繰り返す水疱

☆繰り返す水疱
・鑑別として蚤や亜鉛欠乏、褥瘡(機械的刺激)によるものがある。
・血清亜鉛値を測定し、亜鉛欠乏ならプロマックD錠の内服を行う。
・水疱が緊満性で皮疹もなければ類天疱瘡の可能性あり。抗BP180抗体の測定をしてみる(抗BP180抗体陰性なら抗BP230抗体も測定してみる)。
・局所性なら水疱は潰して皮はとらずに、洗浄しワセリンガーゼで対処。
・痒みが強い時は短期的にステロイド外用を行う。
・全身に多発している時はPSL20-30mg2週間投与し、改善あれば漸減もしくは中止でよい。再発するようならPSL5-10mgで継続する。
・治療に応じて抗BP180抗体は低下していく(病勢を反映する)。


人工呼吸器アラーム対応

☆人工呼吸器アラーム対応
注意)気切造設後すぐのカニューレ交換で気管の前に入ってしまうことがある(指で確認して潰れた気管を広げること)
・無呼吸アラーム
設定:15-20秒に設定
原因と対策:
自発呼吸の低下→PS,CPAPではなくA/C,SIMV,SIMV+PSに変更
呼吸回路のリーク、外れ→リーク(カフ漏れに注意)、回路の確認
自発呼吸のトリガー不良→トリガー感度を上げる
・気道内圧上限アラーム
設定:40cmH2O程度
原因と対策:
設定1回換気量が高すぎる→適切に設定
痰、凝血塊による閉塞→吸引
回路の閉塞、片肺換気→挿管チューブを浅くする、チューブを噛んでいないか
巨大無気肺、緊張性気胸→無気肺の治療、脱気
気管支狭窄、気管支痙攣など→気管支拡張薬
肺炎、肺水腫、ARDSなど肺胞レベルの問題→肺保護換気のため1回換気量を下げる
⑦autoPEEP
の存在→換気回数減少、吸気時間短縮、呼吸時間延長
バッキング(咳)、ファイティング(呼吸器と患者の呼吸が合わずにぶつかる)→鎮静剤の増量、同調性のよいPCV,PSVへ変更
・気道内圧下限アラーム
設定:ピーク圧-10cmH2O,ピーク圧の70-80%原因と対策:
回路接続部のゆるみ、はずれ、回路破損→接続確認
カフ周囲からのリーク:気切チューブの入れ替え
胸腔ドレーンからの大量リーク→呼吸器外科へコンサルト
トリガー感度が鈍く自発呼吸により陰圧形成→トリガー感度を上げる
強い自発呼吸→鎮静剤の増量、同調性のよいPCV,PSVへ変更
・分時換気量下限アラーム
設定:分時換気量の50%程度、PCVでは70-80%原因と対策:
気道内圧下限アラームと同じ原因
不適切な換気モード→自発呼吸を前提としてPSVでは自発呼吸数が減少すると容易に低換気になる、SIMV(+PS)の設定換気回数が少ない場合は増やす
自発呼吸のトリガー不良→トリガー感度を上げる
・分時換気量上限アラーム
設定:10-20L/
原因と対策:
①1
回換気量や換気回数が多すぎる→適切に設定
患者の頻呼吸→鎮静剤の増量
③A/C
設定→A/Cはすべての呼吸をフルサポートするため過換気になるリスクがある
・分時呼吸回数アラーム
設定:30-40/
原因と対策:
患者の頻呼吸→鎮静剤増量
ミストリガー→回路内貯留水が揺れてもミストリガーになれうことがあるので貯留水を除去する、トリガー感度を下げる


高齢者の強い皮膚掻痒感/かゆみ

<高齢者の強い皮膚掻痒感/かゆみ>
・肝機能、腎機能のチェック。
疥癬を除外する(メスの刃を立ててかさぶたのところを数回こすって、スピッツにメスごと入れて提出する)
疥癬ならストロメクトール3mg錠を体重に合わせて1回のみ内服する(15-24kg1錠、25-35kg2錠、36-50kg3錠、51-65kg4錠、66-79kg4錠、66-79kg5錠、80kg以上は200μg/kg)。
・皮脂欠乏性皮膚炎による掻痒感にはオイラックスクリームが有効。
尿素系は保湿効果はあるが、尿素その物が刺激するのでヘパリン類似物質(ヒルドイド)ローションorクリームやオイラックスクリームを使う。
オイラックスクリームが効かない時はヒスタブロック(セレスタミン11-2錠を11-4回投与する(1錠にPSL2.5mgが含まれることに注意、長期使用ならH2ブロッカーを併用する)。
・夜間の掻痒感が強い場合はセロトニン過剰が原因のことがあり、ニューレプチルとして2-3mg(ニューレプチル細粒0.002-0.003g)を11-2回投与も有効らしい。
・少量の抗欝剤(トフラニール10mgなど)や神経因性疼痛用薬剤も有効。
DMはむしろコントロールされている時あたりから出る印象がある。
・類天疱瘡も初期は掻痒感が強い。類天疱瘡ではBP180抗体が増加する。結節性類天疱瘡はBP180抗体が低下する。


抗生剤のMICについて

☆抗生剤のMICについて
 MIC
とは最小発育阻止濃度。例えば、http://www.antibiotic-books.jp/drugsによると、緑膿菌MIC8080%の菌が死滅するMIC)に関して、MEPM6.25μg/mlPIPC16μg/mlとなっている。
 
ここで例えば、ある検体から培養された緑膿菌株に対し、PIPCMIC32μg/mlの場合、添付文書に載っている処方量ではMIC32μg/mlに相当する血中濃度が保てないということ=効果がない、Rと判定される。
 
培養感受性試験の結果、MEPMPIPCがともにS(感受性あり)でも、MEPMMIC6μg/mlPIPCMIC6μg/mlなら、この緑膿菌PIPCの方が効きやすいということになる(本来のPIPCMIC16μg/mlであるため)。 つまり、ともに感受性があり、かつ標準MICと比較しMICが低い抗菌薬がより効果があるということになる。


尿量減少時の対応

☆尿量減少時の対応
・溢水であればラシックス投与、脱水であれば点滴だが、判断しかねる場合も多い。脱水の方がより怖い(脱水⇒臓器還流低下⇒多臓器不全)。迷ったら、まずは点滴をしてみる。
・溢水か脱水かの判断材料は、
 ①in/outバランスを見る。食事量が減っていないか、点滴量が過剰でないか。
 ②浮腫があるのか、turgorの低下があるのかを見る。
 ③溢水であれば血圧上昇、脱水であれば血圧低下であることが多い。
 ④溢水であれば希釈尿、脱水であれば濃尿であることが多い。
一番正確なのは腹部エコーでIVCを見ること。心臓から2cmのところで測定し、プローブを縦にして吸気時/呼気時ともに1mmなら脱水、ともに2桁なら多め、20mm超えてれば溢水。
感染、術後、重症膵炎などでで炎症反応(SIRS)により血管内皮が障害され、サードスペースに浸出し血管内脱水が生じ尿量減少と浮腫や胸水が生じる。血管内脱水で血圧低下となる場合も、血管攣縮やRAA系亢進で血圧上昇となる場合がある。この場合は利尿剤の投与は禁忌に近い。むしろ点滴を増量し腎血流を保たなければならない(胸水貯留に対し胸腔ドレーンを入れてでも)。
・浮腫があるのに濃尿である場合、終末期や肝硬変など低Albでの漏出性の血管内脱水である。酸素化が不良であれば胸水貯留があるので、血管内脱水でもラシックス投与が必要になってくる。要するに、同じ血管内脱水でも回復可能な一時的なものなのか、終末期で回復不可能なのかによって対応が変わってくる(前者なら胸水貯留による酸素化不良があれば胸腔ドレーンを入れてでも点滴を増量する、後者なら酸素化不良あれば利尿剤で水を引く)。


生食ロックとヘパリンロック

☆生食ロックとヘパリンロック
カテーテル閉鎖はカテーテルへの血液の逆流が原因。
・逆流防止効果は生食でもヘパリン生食でも変わりがない。
・ヘパリンはカテーテル上のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の増殖の原因になる。
CVラインにコアグラが付着すると感染源になるためCVラインではヘパリンロックがいいとされてきたが、感染率でも生食ロックと有意差がなかった。
・末梢ラインでもCVラインでも生食ロックでよい。
CVポートの生食ロックの方法:全て清潔手袋装着の後、Jループタイプの短く固いルート(長いルートは動きで逆流することあり)にシュアプラグを接続し生食を10ml以上のシリンジでゆっくりと注入し、シリンジで陽圧をかけながらシリンジを引き抜く(感染防止の観点からなるべく三方活栓は使わない)。その後、ルートを清潔ガーゼでくるんでおく。


潜在性甲状腺機能低下症

☆潜在性甲状腺機能低下症
・顕性甲状腺機能低下症は血清TSH10μU/mL以上、血清FT4が基準値以下。
・潜在性甲状腺機能低下症は血清TSH正常値以上、血清FT4が基準値以内。TSH10μU/mLを超えるならチラージン補充を行う。
・挙児希望ならTSH2.5μU/mLを超えるならチラージン補充を行う。
・顕性、TSH10以上の潜在性ではチラージン補充を行う。
・抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体を測定してまず慢性甲状腺炎の有無を確認する。
cf)
チラージンSの増量の方法
11回朝の内服が基本
12.5-25μgから開始し、2-4週間毎に12.5-25μgずつ増量する
原発甲状腺機能低下症では、維持量をTSH1-2μU/mLになるように1.5-2.5μg/kg/day(50-200μg/day)(中枢性甲状腺機能低下症では血中FT4,FT3を指標にする)


CVポートで点滴漏れが生じたとき

CVポートで点滴漏れが生じたとき
・穿刺間違い(針がポートに刺さっておらず皮下注になっていた、cut down法で造設されており皮下深くにポート本体がある場合は穿刺間違いを起こしやすい)→皮下注であれば滴下不良あるはず、試験的に生食をivしてもスムーズにはいかないはず、CXRでわかるはず
・ポート自体の破損→滴下不良はないかも、生食ivもスムーズ、ポート本体の損傷はCXRCTでは分からない(ポート本体からカテーテルが外れている場合や、カテーテルがピンチオフしている場合はCXRでもわかる、ヨード造影剤でも圧をかけないと漏れが確認できない場合もあるが10mlより小さいシリンジで強く注入すると本体とカテーテルが外れる場合があるので注意)
・ポート破損の徴候として注入時のポートの閉塞、疼痛、注入中の滴下不良、点滴漏れ、腫脹がある。
・すぐ抜去できない場合は、ポート破損を疑えばヘパリンロックし末梢点滴に変更しておく。


健診でγGTPのみ上昇している場合

☆健診でγGTPのみ上昇している場合
・腎、膵、肝、脾に分布している。
・飲酒、胆石、アルコール、サプリ、ランニングなどでも上昇する。
・1ヶ月断酒して再検する。
AST,ALT,γGTP,ALP,HBs抗原,HCV抗体,ANA(AIH),AMA(PBC),腹部エコーして脂肪肝や肝SOLがないか精査する。異常なければ年2回フォローする。
・軽度肝機能異常はウルソ200mg3錠分3で改善することがある。
・胆汁うっ滞でγ-GTPALPLAPが上昇するがγ-GTPはそれ以外でも上昇する。
γ-GTPのみ上昇し、ALP,LAPが正常なら飲酒、抗痙攣薬、非アルコール性脂肪肝である。
γ-GTPはアルコール摂取に敏感に反応して上昇、禁酒後2週間で半分以下になる。


半減期と投与間隔

半減期と投与間隔
・投与間隔=半減期であれば5回目の投与で定常状態(吸収量=排出量)となる。
・投与間隔<半減期であれば5回目の投与でより高い濃度で定常状態となる。
・投与間隔>半減期であれば半減期4倍以内であれば時間はかかるが定常状態となる。
・薬効、副作用が消失するのは投与中止後半減期5倍経た時。
ボルタレン半減期1.6時間なので投与間隔が1.6×4=6.4hr以内だと血中濃度が上がっていずれ定常状態になるので13回投与(8hr間隔)までの投与とする。
・薬剤投与量が代謝酵素の働きを超えた場合は体内消失時間は半減期×5を超える。投与量を倍にすれば血中濃度は倍になるはずだが、それ以上になった場合は投与量が酵素による代謝量を超えていることを示す。
・ザガーロの半減期511回投与し半年後の定常状態における半減期は約1か月なので投与中止後に薬効、副作用が消失するのは約5か月後。
cf) ザガーロは半減期5日である。ザガーロを11回投与した場合に単回投与の最高血中濃度(xとする)の何倍に近づくかを計算してみる。
x5日後にx/2になるので5日間でx/2減少する。そのため1日後にはx/2÷5x/10減少し、x/2-x/10=(9/10)xとなり、さらに1回投与するので(9/10)x+xとなる。同様に2日後は*1x+・・・(9/10)x+x(=Snとする)となる。Sn-(9/10)Sn=x-((9/10)^n)xとなり、n→∞にするとSn/10=xとなる。したがって、Sn=10xとなる。つまり半減期5日のザガーロを11回投与すると血中濃度は単回投与での最高血中濃度10倍に近づくと予想される。実際、ザガーロ0.5mgCmaxは単回投与では3288±1160pg/ml(3.288±1.160ng/ml)で、24週間後は30.69±13.90ng/mlなので約10倍になっている。

*1:9/10)^2)x+(9/10)x+xとなる。n日後には((9/10)^n)x+((9/10)^(n-1